サービスが生み出す社会的価値

私たちの創出する社会的価値とは

 「出会いからイノベーションを生み出す」。私たちは創業以来、ミッションに向き合い、成長を遂げてきました。私はCOOとして、ミッションの実現を当社の売上・利益の成長に結び付けることにこだわってきました。

 私たちが社会に生み出す価値にはさまざまなものがあります。その1つは、世の中をより良くするイノベーションを創出することです。イノベーションは、多様なアイデアをもった人と人とが出会うことから生まれます。当社の提供するサービスを通じて、これまで気付き得なかった出会いがあることに気付くことができる。出会うべき人と出会える。これはまさに、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションそのものです。

 またもう1つ、大きな社会的価値を生み出しているのが、サービスを通じて、ビジネスパーソンや企業・組織の価値創出を後押しすることです。社会には多様な課題が山積しており、各企業や公的機関等の組織、そこで働くビジネスパーソンらが日々、それぞれの認識する課題の解決に向き合っています。こうした社会課題の解決に取り組む際に阻害要因となっているのが、いわゆる「ムダ」です。当社のサービスは、アナログな業務の中にある「ムダ」をデジタル化することで排除していく思想で開発しています。サービスを通じて、ビジネスパーソンの限りある時間を、より価値ある業務に使えるようにして、社会にイノベーションを生み出すことを後押しする。そうした価値貢献もあります。

不可逆なビジネスインフラになる

 当社サービスの生み出す価値が、社会に伝わり、広がっていることを私が実感するのは、やはり、新規顧客の獲得や既存顧客の契約更新があった時です。これら1つひとつが積み重なる度に、素直にうれしく感じます。しかし、その広がりが日本だけに閉じていては、私たちが真に社会にイノベーションを生み出しているとは言えません。その意味で、海外のお客様にも当社サービスをご利用いただけているシーンを目にすると、価値の広がりをより強く実感できます。

 2024年5月期で特に印象深かったのが、株式会社竹中工務店様のタイの現地法人でBill Oneを導入いただけたことです。タイでは、日本以上に紙や手書きサインの文化が根強く残っており、業務上のほとんどの書類が紙でやり取りされています。竹中工務店様のタイ現地法人では、これまで建設工事を進める各現場に経理担当者を常駐させ、資材供給や運送等の多種多様な取引先から受け取る紙の請求書を、現場で管理・処理していました。

 私自身も当社スキャンセンターで受け取る、同社の月に2,000件以上もの紙の請求書を仕分けする作業を視察しましたが、フォーマットも統一されていない中での大量の請求書の管理・処理は、現場に相当な手間と負荷をかけており、これまでのアナログな処理のままでは、人的ミスが発生しやすいという課題が生じていました。私は、その大量の請求書の束がBill Oneによってデータ化されていくという、お客様にとって初めてのシーンに立ち会ったのですが、それはまさに、当社サービスが社会的価値を生み出す瞬間だったように思います。当初は、過去の業務フローや習慣を変えなければならないことへの心理的な抵抗もありましたが、導入までに複数回の研修会を開催する等、準備を進めました。そして、一度利用しさえすれば、元の紙ベースでの請求書のやり取りに後戻りしたいとは思えなくなる。そのようなイノベーションが起きました。

 社会に価値を生み出すプロセスは、このように一歩一歩、お客様も含めて皆で突破していくことが大事だと思います。そして、この地道なプロセスを経ることで、初めて、当社サービスが「ビジネスインフラ」として社会に定着・浸透していくのだと感じています。

働き方を変革する

 革新的なDXサービスを通じて人々の働き方を変革させていくことは、当社が向き合う重要分野の1つです。当社では、この分野におけるマテリアリティ(重要課題)に関して、2030年5月期までに、「当社サービスでのアナログ情報のデジタル化件数5億件」「当社サービス利用者数2,000万人」の2つの目標を掲げています。

 アナログ情報のデジタル化は、創業以来、当社が培ってきた最も強いコアコンピタンスです。依然、紙ベースでのアナログ業務が社会に多く残る中で、私たちのDXサービスは、どれだけ「ムダ」を排除でき、業務効率化に貢献できたのか、ビジネスパーソンが本来向き合うべき業務に時間を使えるよう貢献できたのか。それを測る分かりやすい指標として、アナログ情報のデジタル化件数を設定しました。同時に、どれだけ多くの人がデジタル化によって業務効率化を図れたのかという視点から、当社サービス利用者数も指標に設定しました。

 2024年5月期は、当初想定した以上に進捗が見られ、デジタル化件数は2.4億件、サービス利用者数は789万人と、悪くない数値を出せたと評価しています。残り6年間での目標達成は、引き続きチャレンジングではあります。しかし、サービス利用者数を増やし、事業が成長した結果、当社の企業価値が向上しているのであれば、自信を持って社会に価値を生み出していると断言できると思います。

事業成長でインパクトをもたらす

 昨年の統合報告書では、事業戦略を「最適化から最大化へ」と転換したことをお話ししました。2024年5月期は、各サービスとも最大化に向けてしっかり前進したと評価しています。

 今後、Sansanは、企業情報データベースを拡充することで、営業DXサービスとしての認知を広げていきます。また、将来的には、海外でも企業情報データベースを軸に営業DXサービスへと進化させたいと思います。Bill Oneは、国内では請求書の「受領」「発行」、そして法人カードを軸にした「経費精算」の3本柱で、月次決算を加速させるサービスへと昇華させると同時に、海外では、会計制度や商習慣等の各国・地域の特性・ニーズに対応したソリューションとなることを通じて旺盛な需要を取り込み、成長加速を図ります。Contract Oneは第2のBill Oneと言えるような成長を目指します。また、それに続く新サービスについても検討していきます。

 これからも当社事業を着実に成長させ、その結果として、定性・定量の両面から社会にインパクトを生み出していきたいと思います。

取締役/執行役員/COO
富岡 圭